能代市旧料亭金勇

令和2年度 金勇句会


3月金勇句会より

仰ぎたる氷割の欄間冴返る     (支 靜 加)

北前の「引き札」ゆかし春の夢 (相澤 紘一)

玄関に座りよき石風光る    (古川よしみ)

金勇に春泥の靴小さき客    (戸田佐江子)

春風を入れ金勇の景を撮る   (柴田テツ子)

料亭のランチの小鉢木の芽和  (佐藤 千女)

春慶塗の木目の流れ春日差   (船越 みよ)

思い出の羽音金勇展おぼろ   (武藤 鉦二)

祖父からの金勇伝説風光る   (吉田 美穂)

梅真白秋田美人のガイドかな  (池内 奏春)

春光やいずれも達筆献立表   (首藤  圭)

杢板の階をのぼれば花明り   (松 はるか)

金勇の飾り包丁春の宵     (街道 歩人)


金勇句会 年間賞

〇最優秀賞
夏足袋の案内(あない)木都の格(ごう)天井  (岸部  吟遊)

旧料亭「金勇」を訪ねると、優しく丁寧なスタッフの案内で、一間幅の長廊下を通ってゆく。木の館に、夏足袋の鮮やかな白さがこの句のポイントだ。やがて百十畳の大広間に木都の名残を堪能し、杢目板を卍に配した格天井に感嘆するのだ。

〇優秀十句
百拾畳を支ふる柱年惜しむ     (岸部  吟遊)

神の庇護あり金勇蝉しぐれ     (船越  みよ)

千本木欄間透けゆく夏日影     (柴田 テツ子)

月明の往時の材木談議かな     (船越  みよ)

床柱触れてきらめく淑気かな    (支 靜 加)

金勇の当主の思い冬銀河      (街道  歩人)

一瞬の日矢に際立つ冬館      (佐藤  みき)

鳥翔ちし気配社のしづり雪     (布施  鷹夫)

囲碁の間の静けさ冬の石の庭    (武藤  暁美)

大広間卍の天井春を待つ      (戸田 佐江子)


2月金勇句会より

木の芽和街騒を絶つ花鳥の間      (古川よしみ)

木の芽立つ四阿の伏鉢確かなり     (柴田テツ子)

弁財(べさい)船(せん)瞳に宿す古今雛   (街道 歩人)

白神の霞羽織って館立つ        (街道 歩人)

しゃぼん玉キラキラ飛んで特攻碑    (佐藤 千女)

直幹と木都のきずな初筏        (佐藤 みき)

白神山(しらかみ)の芽吹き木都の立志伝 (船越 みよ)

次の間に盆梅のある気配かな      (布施 鷹夫)

春の陽を活ける花籠でんと座す     (首藤  圭)

金勇ガイド能代訛りのあたたかし    (支 靜 加)

ああひろいたたみのうえのきもちよさ  (はまのあめり)


冬の秀作


金勇の当主の思い冬銀河      (街道 歩人)

囲碁の間の静けさ冬の石の庭    (武藤 暁美)

着ぶくれて五空の句碑をなぞりけり (岸部 吟遊)

床柱触れてきらめく淑気かな    (支 靜 加)

一瞬の日矢に際立つ冬館      (佐藤 みき)

鳥翔ちし気配社にしづり雪     (布施 鷹夫)

職人技の褪せぬ金勇白障子     (船越 みよ)

大広間卍の天井春を待つ      (戸田佐江子)

部屋ごとに明るさちがう鏡餅    (古川よしみ)

金勇の歴世透かす大氷柱      (松 はるか)


1月金勇句会より

大広間卍の天井春を待つ        (戸田佐江子)

部屋ごとに明るさちがう鏡餅      (古川よしみ)

白足袋のすっと小走り長廊下      (船越 みよ)

包丁塚積もりて白き綿帽子       (佐藤 千女)

金勇の歴世透かす大標柱        (松 はるか)

神官におじぎの園児春隣        (佐藤 充重)

初日受く木都の目覚め永久(とこしえ)に (吉田 美穂)

雪吊りの金勇むかしを語る母      (支 靜 加)

大屋根の破風に挑んで虎落笛      (街道 歩人)

冬館北前船を語り継ぐ         (武藤 鉦二)


12月金勇句会より

金勇四代目当主金谷孝氏(令和二年十二月二日逝去)を追悼して

金勇の当主の思い冬銀河   (街道 歩人)

床柱触れてきらめく淑気かな (支 靜 加)

初雪や鳥海男鹿の石の庭   (柴田テツ子)

百拾畳を支ふる柱年惜しむ  (岸部 吟遊)

一瞬の日矢に際立つ冬館   (佐藤 みき)

鳥翔ちし気配社のしづり雪  (布施 鷹夫)

緞帳と杉の温もり手を繋ぐ  (吉田 美穂)

職人技の褪せぬ金勇白障子  (船越 みよ)

金勇の大屋根弾く玉霰    (戸松 春生)

格天井言葉はいらぬ冬銀河  (鈴木 明夫)


秋の秀作


金勇の燈や色変へぬ逆さ松  (岸部 吟遊)

境内を癒してやまぬ法師蝉  (布施 鷹夫)

緞帳揺れ柳腰ゆれ踊下駄   (佐藤 充重)

大屋根が支える木都秋の空  (街道 歩人)

色かえぬ松白壁の塀に映ゆ  (古川よしみ)

月明の往時の材木談議かな  (船越 みよ)

花籠は京都の生まれ式部の実 (支 靜 加)

割氷の紋様透かし今年酒   (浅田 英夫)

秋生ける春慶塗の奥座敷   (戸松 春生)

全館にオカリナ響き鳥渡る  (吉田 美穂)

※写真は11月12日頃のものです。


11月金勇句会より

全館にオカリナ響き鳥渡る     (吉田 美穂)

境内に子等の声とぶ小春かな    (佐藤 みき)

おでん酒金勇界隈まだ昭和     (布施 鷹夫)

きりたんぽ旧料亭を語り継ぐ    (船越 みよ)

亭を詠む不思議なご縁冬うらら   (森 すみれ)

囲碁の間の静けさ冬の石の庭    (武藤 暁美)

着ぶくれて五空の句碑をなぞりけり (岸部 吟遊)

庭仕舞い寒さ集まる踵かな     (戸松 春生)

日月や石灯籠に積もる雪      (向田久美子)

朔風が清めし庭に朝陽差す     (街道 歩人)


10月金勇句会より

色かえぬ松白壁の塀に映ゆ    (古川よしみ)

通されし多津美の部屋に掛障子  (柴田テツ子)

木漏れ日の石碑にすがる秋あかね (佐藤 みき)

月明の往時の材木談議かな    (船越 みよ)

大広間ポニーテールの子踊り出す (戸田佐江子)

花籠は京都の生まれ式部の実   (支 靜 加)

落ち葉掃く若人の背ナ逆さ松   (首藤  圭)

案内の青き前垂れ夕紅葉     (向田久美子)

割氷の紋様透かし今年酒     (浅田 英夫)

秋生ける春慶塗の奥座敷     (戸松 春生)

入母屋の影黒々と星月夜     (街道 歩人)


9月金勇句会より

金勇の屋根高々と夕紅葉  (武藤 暁美)

金勇の燈や色変へぬ逆さ松 (岸部 吟遊)

料亭の苔むす庭に虫すだく (佐藤 千女)

神域の老松かしぐ野分あと (佐藤 みき)

境内を癒してやまぬ法師蝉 (布施 鷹夫)

十五夜の影しんしんと大広間(柴田テツ子)

金勇の木都の匂い秋澄めり (船越 みよ)

秋を舞う杢目正しき大広間 (戸松 春生)

緞帳揺れ柳腰ゆれ踊下駄  (佐藤 充重)

二階より高砂の声豊の秋  (向田久美子)

大屋根が支える木都秋の空 (街道 歩人)


金勇句会 夏の秀作

夏の句、投句いただいた九十五句から選出しました。

夏足袋の案内木都の格天井  (岸部 吟遊)

神の庇護あり金勇の蝉しぐれ (船越 みよ)

金勇ランチ耳元の風涼し   (支 靜 加)

よもやま話聴きし天井若葉雨 (五十嵐ゆみ子)

千本木欄間透けゆく夏日影  (柴田テツ子)

沙羅の花軌跡残して落ちる朝 (街道 歩人)

戸障子の灯り万緑灯しおり  (大高 俊一)

夕蝉や文字の大きな帳場跡  (武藤 暁美)

ひっそりと杉の香満ちる夏座敷(佐藤 千女)


8月金勇句会より

不夜城展めぐる菊師の一家族  (布施 鷹夫)

大根蒔く今日の紙上に金勇句  (森 すみれ)

入母屋の杉の館やこぼれ萩   (武藤 暁美)

床の間に銘石ひとつ秋のこえ  (古川よしみ)

星月夜まるで神馬も跳ぶごとし (佐藤 千女)

秋黴雨昼灯すや長廊下     (柴田テツ子)

爽やかや大の字になる大広間  (船越 みよ)

緞帳の前の再会紅葉照る    (吉田 美穂)

姉の婚ありし九月の大広間   (支 靜 加)

爽籟や宴の跡の大広間     (浅田 英夫)


7月金勇句会より

千本木欄間透けゆく夏日影   (柴田テツ子)

ひっそりと杉の香満ちる夏座敷 (佐藤 千女)

先達の句座在りし亭夏の星   (森 すみれ)

沙羅の花軌跡残して落ちる朝  (街道 歩人)

大天井木挽きの汗の光かな   (佐藤 充重)

夏足袋の案内木都の格天井   (岸部 吟遊)

戸障子の灯り万緑灯しおり   (大高 俊一)

金勇ランチ耳元の風涼し    (支 靜 加)

夕蝉や文字の大きな帳場跡   (武藤 暁美)

神の庇護あり金勇の蝉しぐれ  (船越 みよ)

天井の杢目のうねる晩夏かな  (武藤 鉦二)